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恐くないぞ『事故物件 恐い間取り』【ネタバレあり】

映画『事故物件 恐い間取り』

【キャスト】 亀梨和也 奈緒 瀬戸康史 江口のりこ

【スタッフ】 監督中田秀夫 脚本:ブラジリィー・アン・山田

【原作】 松原タニシ「事故物件怪談 恐い間取り」(二見書房)

目次

あらすじ

TV番組への出演を条件に、「事故物件」で暮らすことになった芸人の山野ヤマメ(亀梨和也)。
その部屋で撮影した映像には白い”何か”が映っていた…。
番組は盛り上がり、ネタ欲しさに事故物件を転々とするヤマメ。
しかし人気者になっていく一方、次々と怪奇現象に巻き込まれていく。
そしてある事故物件で、ヤマメの想像を絶する恐怖が待っていたー。

出典:映画『事故物件 恐い間取り』公式サイトより

筆者の感想

原作

松竹芸能所属のピン芸人・松原タニシが実際に事故物件で暮らした際に体験した奇妙な出来事をまとめたノンフィクション「事故物件怪談 恐い間取り」がこの映画の原作。

亀梨和也演じる主人公の山野ヤマメは原作者の松原タニシがモデルです。

確かに個々のエピソードは不気味なものばかり。しかし実体験が基になっているが故に正直言って「弱い」

原作者の松原タニシが存命であることから「主人公が死んじゃうかもしれない」という緊張感も無いし、ここはホラー映画としては致命的な弱点。

実は主人公たちに降りかかる怪奇現象よりも、事故物件で起こった出来事を再現フィルム化したシーンが一番恐かった。特に引きこもりの息子が高齢の母親を惨殺する場面。やはり霊的なものより生きている人間こそが一番恐ろしいのだとあらためて実感させられた次第です。

中田秀夫監督

この映画は「リング」シリーズでお馴染みの中田秀夫監督がメガホンを取ってます。

ホラー映画の巨匠的ポジションに居る中田監督ですが、近年は定年後の会社員の悲哀を描いた「終わった人」(舘ひろし主演)やスリラー系の「スマホを落としただけなのに」(北川景子主演)のような非ホラー作品を手がける機会が目立ち、そろそろホラーは卒業するのかと思っていたのですがやっぱりホラーに戻ってきました。

中田監督が得意とするショッキングなカットはこの作品でも健在。しかし先ほど述べたように如何せんストーリーが弱いので恐怖が積み上がっていきません。

恐怖演出もどこかで見たような既視感があり、特にラスト、車に轢かれて手足が不自然な方向に曲がってしまっている江口のりこを見て中田監督のデビュー作『女優霊』を連想した方も少なくはないでしょう。

つまりホラーとしては恐さも斬新さも今一歩と感じた作品だったわけですが、実際にはこの映画、大ヒットを記録しています。

興行収入20億円超

興行通信社の調べによると『事故物件 恐い間取り』は2020年8月28日の公開から同年10月11日までの累計で観客動員169万685名興行収入22億3,957万円を記録したとあります。

これは文句のつけようのない大ヒットです。

亀梨和也という人気アイドルが主演したことによる集客効果。そして映画内に不思議な声や映像が紛れ込んでいるというウワサが流れ、これを検証するためにリピーターが続出したという事実。また通常版の上映の他に4DXによる上映がありホラーアトラクションとして楽しめたこと。

以上が大ヒットの要因と推定されるのですが、いずれも宣伝や仕掛けの上手さに拠るもので「作品の面白さ」が要因になっていないところは確かに納得できるところではあります。

とはいえ映画はヒットしてナンボ。作り手からすれば大勝利であり「成功した映画」であったことは間違いありません。

日本アカデミー賞の違和感

これだけの大ヒットを記録した『事故物件 恐い間取り』ですが、第44回日本アカデミー賞において主要部門はおろか撮影・照明などの技術部門賞も含めほぼスルーされました。唯一、事故物件を紹介する不動産会社社員役の江口のりこだけが優秀助演女優賞に選出されています。

江口のりこがブレイクしたのは2020年の大ヒットドラマ『半沢直樹』で国交相・白井亜希子を演じた時。

その知名度と話題性により日本アカデミー協会が無理やり授賞した感が否めません。

「これだけ大ヒットした映画なのに賞を何もあげないのはいかがなものか」という変なバランス感覚が作用した可能性もあります。

もちろん彼女の個性と演技力を否定しているわけではありません。しかし「何もこの作品でなくても」というのが正直なところ。

もっとも他の優秀助演女優賞を見ても後藤久美子・安田成美など久しぶりに映画作品に出演したという話題先行の受賞者であり、このことは民放のプライムタイムで放送され視聴率を意識せざるを得ない日本アカデミー賞の限界、ひいては選考の不公正さ・不透明さを如実に示しているようにも思います。

 

なお『事故物件 恐い間取り』は2022年5月10日現在、Amazon Prime Video で視聴可能です。(リンクはこちら

 

 

 

 

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