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意外と掘り出しモノ『スペシャルアクターズ』

映画『スペシャルアクターズ』

【キャスト】 大澤数人 河野宏樹 富士たくや 北浦愛

【スタッフ】 監督・脚本編集 上田慎一郎

目次

あらすじ

超能力ヒーローが活躍する大好きな映画を観てため息をつく売れない役者の和人。ある日、和人は数年ぶりに再会した弟から俳優事務所「スペシャルアクターズ」に誘われる。そこでは映画やドラマの仕事の他に、依頼者から受けた相談や悩み事などを役者によって解決する、つまり演じることを使った何でも屋も引き受けていた。そんなスペアクに、”カルト集団から旅館を守って欲しい”という依頼が入る。ヤバ目な連中相手に計画を練り、演技練習を重ねるスペアクの役者たち。しかし、和人にはみんなに内緒にしている秘密があった。極限まで緊張すると気絶してしまうのだ。あろうことか、このミッションの中心メンバーにされた和人。果たして、和人の運命やいかに!?

出典:映画『スペシャルアクターズ』公式サイトより

筆者の感想

上田慎一郎監督

僅か300万円の製作費で興行収入31億円を稼ぎ『カメ止め』現象を巻き起こした映画『カメラを止めるな!』

この映画を監督した上田慎一郎氏の劇場長編映画第2弾となったのが今回取り上げた『スペシャルアクターズ』です。

劇場公開時はあまり宣伝に力を入れていなかったのかそれほど話題にならず、『カメ止め』の時のようにクチコミで観客が増えて行くわけでもなく、ひっそり公開されてひっそり公開終了した印象の映画でした。

公開当時のレビューを見ても酷評が多く、筆者自身劇場に足を運ぶのを止めた一人なのですが、今回WOWOWで放映されたのでようやくこの作品を観てみようという気になりました。

正直「時間の無駄になったらイヤだな…」という感じで全く期待しないで観たのですが、観てみたらなかなか面白かった。

期待値のハードルを上げた状態で見ると「期待外れ」となったのでしょうが、逆に期待していなかった分「意外とちゃんとしてるやん」という感想に落ち着きました。

ひと言で言うと…

『スペシャルアクターズ』を観ている間、ずっと思ったのは「これって低予算の『コンフィデンスマンJP』だな」ということ。

『コンフィデンスマンJP』は長澤まさみ演じる詐欺師のグループがお宝を手に入れるため大芝居を仕掛けてターゲットを騙す、というお話。

『スペシャルアクターズ』では「詐欺」という違法行為こそ行わないものの、依頼人からの要望に応じて役者たちがターゲットを芝居でだますという点は共通しています。

ただ『コンフィデンスマンJP』と違い『スペシャルアクターズ』には名前の知られた俳優は一人も出てきません。

『カメラを止めるな!』も同様にノー・スターの映画だったのですが、それを補うアイデアの斬新さと「低予算」そのものを宣伝材料にした強みがありました。

『スペシャルアクターズ』には『カメ止め』ほどの強烈な意外性はなく「低予算」も最早「売り」にはならない。

興行的に苦戦した要因はこういうところにもあったのでしょう。

スケール感

筆者の場合は劇場ではなくWOWOWで観たのでそこまで気にならなかったものの、もし劇場でお金を払って観ていたら「劇場で観るほどのものではないな」という不満を抱いたかもしれません。

敢えて大スクリーンで観るほどのスケール感は無いし、TVドラマで十分。それで純粋に面白い。そんな作品です。

『カメ止め』はスケール感は無くとも劇場で他の観客と感情を共有することが楽しく、そこに劇場で観る意味と価値がありました。

『スペシャルアクターズ』には残念ながらそこまでのパワーはなかった。

でも「だから観ない」というのは勿体ない。TV放映やサブスク、DVDソフトなどで気軽に視聴してみることをオススメします。

果たして「低予算」で良かったのか?

『スペシャルアクターズ』の製作費は5,000万円だそうです。

『カメ止め』の製作費からは6倍に跳ね上がっていますが、それでも「低予算」には変わりありません。

興行収入31億円を叩き出した監督の次回作が果たして製作費5,000万円で良かったのでしょうか?

上田監督の意向として「キャストを無名の役者で」というのはあったのかもしれません。でも監督のネームバリューだけで客を劇場に呼ぶのには限界がありますし、一般の観客にとって「誰がこの映画に出演しているか」は観る映画を選ぶ際の重要なポイントです。自主映画ならともかく商業映画なのであればキャスティングや宣伝にはもっと十分なお金をかけてあげるべきだったと思います。

2022年1月に公開された上田監督の最新作『ポプラン』には相変わらず無名のキャストたちが名を連ねているものの、徳永えり・原日出子・渡辺裕之といった名の知れた役者たちもようやく顔を出しています。

これを足掛かりに上田監督がビッグバジェットの作品を撮るようになるのか、あるいは今までのようにインディーズの立ち位置にとどまるのか。

次回作の情報はまだ聞こえてきませんが、上田監督の今後を注目して見て行きたいと思います。

 

 

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