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瀧内公美の熱演が光る『裏アカ』【ネタバレあり】

映画『裏アカ』

【キャスト】 瀧内公美 神尾楓珠 市川知宏 SUMIRE 田中要次

【スタッフ】 監督:加藤卓哉 脚本:高田亮 音楽:Maozon

TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2015 準グランプリ作品

目次

瀧内公美

筆者が女優・瀧内公美を最初に認識したのは2021年春にフジテレビ系で放映された松たかこ主演のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』

瀧内が演じる有名女優・古木美怜はとわ子(松たかこ)の2番目の夫・鹿太郎(角田晃広)に「ある魂胆」があって接近するが、次第に鹿太郎に対して恋愛感情を抱くようになる、という役どころ。

以後、WOWOWのドラマなどで頻繁に瀧内公美を見る機会が増えて行くのですが、最も印象に残ったのは演技の方ではなく『タモリ倶楽部』に出演した際の「ブリゲーム」

「イカゲーム」ならぬ「ブリゲーム」とは、回転寿司のレーンに乗って流れてくるブリ、ハマチ、ヒラマサ、カンパチを瞬時に見分けるゲーム。

瀧内が寒ブリで有名な富山県出身ということでオファーされたようですが、富山出身だからと言って見た目が似ている4つのネタを見分けるのは至難の業。

タモリも三四郎の小宮・相田も全く見分けられない中、コツをつかんだ瀧内だけは最後の方になると100%の正解率。今やWikipediaで瀧内公美の特技は「ブリゲーム」とまで書かれています。

「番宣目的以外でバラエティに出演する俳優に悪い人はいない」が持論の筆者の中で瀧内公美の株は急上昇。

その彼女が主演を務める映画『裏アカ』がWOWOWにて放送。

「これは観るしかない」ということで興味を持って視聴しました。

あらすじ

出典:映画『裏アカ』公式サイトより抜粋

青山のアパレルショップで店長を務める伊藤真知子は、どこか満たされない毎日を送っていた。自分の意見は採用されず、年下のカリスマ店員・新堂さやかに仕事を取られ、ストレスが溜まる日々。そんなある日、さやかの何気ない一言がきっかけで真知子はSNSの裏アカウントを作り、胸元の際どい写真を投稿する。表の世界では決して得られない反応に快感を覚えた真知子の投稿はどんどん過激になっていき、それに呼応するようにフォロワー数も増えていった。

「リアルで会いたい」「もっと自分を解放して」 そんな言葉に誘われ、フォロワーの1人と会うことになった真知子。その相手は、”ゆーと”という年下の男だった。 真知子は自分と同じ心の乾きを持つ彼に惹かれていく。しかし、その関係は1度きり。それがゆーととの約束だった。ゆーとと会えないことから、真知子は他の男と関係を持つようになるが、その心は満たされない。裏の世界でフラストレーションがたまっていくのとは裏腹に、表の世界は、店の売り上げ不振回復への施策に自身のアイデアが採用され、大手百貨店とのコラボレーション企画が決まるなど充実していく真知子。やりがいのあるプロジェクトに意気込む真知子だったが、その百貨店担当者の原島努こそが、あのゆーとだった。

筆者の感想【ネタバレあり】

非現実的なSNS描写

ツイッターと思われるSNSの描写が現実離れしていて「そんなのある?」というのがまず第一印象。

下着写真を投稿するようなアカウントなど危なくて、まずフォローしようという気持ちなど起きないのが普通ですが、主人公の真知子が作った裏アカウントはどんどんフォロワーが増えて行く。

もしかすると筆者が知らないだけで、こういう通称エロ垢と呼ばれるアカウントに人が群がる現実も一部にはあるのかも知れません。

それに、そもそもフィクションですから「現実に即していないとダメ」というものでもありません。

でもSNSのリアルな描写を前提に鑑賞しようとしていた筆者は、この前提が最初から崩れてしまったことで少々拒否反応を覚えました。

濡れ場満載

設定は多少粗くとも瀧内公美の濡れ場での熱演には目を見張りました。

そもそも主演デビュー作のオーディションでいきなり監督に「脱げます」とアピールした女優です。惜しげもなく裸体を披露し、神尾楓珠だけでなく他にも複数の男性との絡みを大胆に演じています。

神尾楓珠演じる"ゆーと"もSNSで知り合った複数の女性と関係を持っており、さらにその様子を全てスマホ撮影して保存。

撮影した映像を壁に投射して見る場面では喘ぐ女性が次々に映し出され、ここでも我々は延々と濡れ場を強制視聴させられることに。

ある意味「大サービス」なのですが、家族とは一緒に見られないですね。

唐突な暴露

物語の終盤、真知子の会社と大手百貨店がコラボレーションパーティーを開催する場面があります。

パーティーの席上、コラボのイメージ映像が突如真知子の裏アカウントを暴露する映像に切り替わり会場は騒然。

犯人は真知子に一方的に好意を寄せていたオンラインショップ担当の岡田という男。この男が何の前触れもなく突然登場。

一応前振りとして真知子の裏アカウントに執拗に「会いたい」とメッセージを送ってくる男の存在があり、それがこの岡田ではないかと推測はできます。しかし実物の本人登場が余りにも唐突過ぎて戸惑いを覚えました。

またSUMIRE演じるカリスマ店員・新堂さやかは、真知子に裏アカウントを作るきっかけを与えた重要人物なのに中盤以降は全く存在感がなくなります。

さやかが真知子と言葉を交わすシーンはほぼ皆無となり、その代わりさやかが無言で真知子を見つめるカットが目立つように。

さやかがあまりにも意味深に真知子を見つめるので「もしかしてコイツが裏アカ暴露の犯人か?」と勘繰ったりもしましたが、結局そんなことはなく。

もしかするとさやかを犯人とミスリードさせるよう敢えて狙った演出だったのかもしれませんが、いっそのこと本当にさやかが犯人だった方が話が膨らんで面白かったようにも思いました。

”ゆーと”こと原島努

神尾楓珠が演じる原島努は本人曰く子どもの頃から何でもできる優秀な子で、自分が好きになった女性が自分を嫌いだったことがないという「俺様人間」。

神尾自身、バラエティ番組のトークで似たような発言をしていたことがあり、原島努はまさに神尾楓珠のための役と言っても良いのかもしれません。

幼少の頃から成功体験ばかりしていて挫折が無いと「悔しい」という感情も理解できないし、人生が虚無的なものに感じられてしまう。原島は真知子にそう告白します。

そうなる気持ちも分かりますが、多くの人は大なり小なり「挫折」を経験して生きていますから、この原島努なる人物に感情移入ができないです。

しかも女性との性行為の場面を撮影してスマホに保管している動機も不明。

作品としてコレクションしているという設定ならば、その狂気をもっと深く掘り下げて見せてくれていたら…。

まとめ

SNSの「裏アカウント」を使って承認欲求を満たしていた女性の転落劇を描いた本作ですが、個人の意見としては演出的にもストーリー的にも「惜しい」と感じる部分が多々ありました。

ただ瀧内公美の熱演は素晴らしかった。とりわけ神尾楓珠との絡みの場面は非常に強く印象に残っています。

監督の加藤卓哉氏は様々な監督の下で助監督を務めた経験を持ち、本作が長編デビュー作とのこと。

次回監督作はオール台湾ロケの作品とのことですが、『裏アカ』のようなテイストの作品になるのか、それとも全然違う風味の作品になるのか、監督の名前を憶えておいていつか視聴してみたいと思います。

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