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そんなに酷い? 『大怪獣のあとしまつ』【ネタバレあり】

画像:松竹公式サイトより

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公開初日から酷評の嵐

松竹・東映が映画会社の垣根を越えて共同企画・配給を手がけた『大怪獣のあとしまつ』

2022年2月4日に公開されるやネットを中心に「大駄作」といった酷評の嵐が吹き荒れました。

筆者は公開初日の初回にこの作品を見に行き「まぁこんなもんかな」という可もなく不可もなくの感想を持ったのですが、他の方の感想をネットで探してみたところ、出るわ出るわの罵詈雑言の数々

正直、この作品に対してこんなにも「怒っている人」が多いのは意外でした。

なぜ、たくさんの人々が怒ってしまったのでしょうか。

ストーリー

『大怪獣のあとしまつ』はこんな内容の作品です。(松竹公式サイトより引用)

人類を未曽有の恐怖に陥れた巨大怪獣が、ある日突然、死んだ。

国民が歓喜に沸き、安堵に浸る一方で、残された巨大な姿態は徐々に腐敗・膨張を進めていた。

爆発すれば国家崩壊。終焉へのカウントダウンは始まった。絶望的な時間との戦いの中、

国民の運命を懸けて死体処理を任されたのは、警察でも軍でもなく、3年前に突然姿を消した過去をもつ1人の男…。

彼に託された<使命>とは一体?

果たして、爆発を阻止することができるのかーー!?

前代未聞の緊急事態を前に立ち上がった、

ある男の”極秘ミッション”を巡る空想特撮エンターテイメントが、今、動き出す。

出典:松竹公式サイト

筆者の感想【ネタバレあり】

『大怪獣のあとしまつ』の監督・脚本を務めたのは三木聡

深夜のTVドラマ『時効警察』シリーズで有名な方ですが、彼の監督作品と知って『大怪獣~』がシリアスな作品にならないのはまず予想できました。

ただコメディ作品にしても『大怪獣~』は笑わせるポイントがズレていましたし、ギャグもお寒い感じがしたのは事実です。

「三木聡監督作品に慣れていない人はキツイだろうな」と思いながら観ていましたが、実際筆者のようにある程度慣れている者でも正直キツかった。

特に「ウンゲロ」系や「キノコ=ち○こ」のような今時小学生でも笑わなさそうなギャグの連打は余りにも痛々しく、観ている方が白けるのは当然だったでしょう。

でもそれは三木聡監督だから仕方ないと言えば仕方ない点ではなかったかと。

また、この作品を酷評している方が一番腹立たしく思っているのは、おそらくラストシーンかと思います。

筆者はあの場面、東宝の『シン・ウルトラマン』に対して松竹・東映がエールを贈っているように思えてニンマリしていました。

土屋太鳳の最後のセリフ「ご武運を…」というのが、まるで後日公開される『シン・ウルトラマン』のヒットを祈念して出てきたもののように思えて「敵(東宝)の幸運を祈るとは、松竹・東映、粋だねぇ」とさえ感じた次第です。

総じて最初から最後まで盛大にふざけ倒した作品だったわけですが、そんな作品は世の中にたくさんあるし、あそこまで観客を怒らせたのは一体何だったんだろう?というのが正直な感想でした。

期待の反動?

もしかすると大多数の観客が真面目な怪獣(の後始末)映画を期待して観に行っていたのかもしれません。

大怪獣の死骸をどう処分するのかリアルなシミュレーションを見たかったのに、出てきたのが大して面白くもないおふざけ映画だった。これはけしからん!となったとか。

確かに予告編ではコメディ要素が極力排除され、シリアスな映画と誤解されても仕方なかったところはあります。

また作品に登場する大怪獣の造形を担当したのが「平成ゴジラシリーズ」で特撮ファンにはお馴染みの若狭新一氏であることが宣伝では殊更に強調されていたため、これも「スクリーンで新作の怪獣映画が観たかったんだよ!」という層に一定の期待を持たせてしまったことは否めません。

今回の酷評祭りは観客側の大きな期待が裏切られたことによる反動で勃発したものと言えるでしょう。

2008年に公開された河崎実監督の映画『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』は、1967年の怪獣映画『宇宙大怪獣ギララ』ギララが41年ぶりに復活ということで当時特撮ファン・怪獣ファンの間で話題になった作品です。

中身はというと小泉純一郎元首相や金正日のそっくりさんがコント風に演技したり、巨大なビートたけし型ロボットがギララと闘ったりと滅茶苦茶な内容なのですが、これを観た特撮ファンや怪獣ファンが激怒したり酷評したという話は全く聞きません。

それは事前に誰もが河崎実監督作品であることを理解していたからです。

河崎実監督ならシリアスな怪獣映画になるわけがないとあらかじめ分かっているのでおふざけ映画が出てきても想定内ですし、逆にシリアスな映画を提供された方がむしろ戸惑ってしまいます。

『大怪獣のあとしまつ』も三木聡監督・脚本のコメディ作品であることが周知されていれば、ここまでの酷評騒動は起こっていなかったでしょう。

『大怪獣~』のエンドロール後に首相役の西田敏行と環境相役のふせえりが再び登場し続編の告知をします。次回作では予算が大幅に削られ、大怪獣ガメラに似たメラという怪獣が登場するとのこと。

もちろんこれはただの冗談で続編の話など実際には無いのでしょうが、できれば本当に製作していただきたい。

続編公開の暁には、これがシリアスな映画でないことはもう誰もが分かっているので今回のような酷評祭りは決して起きないと思います。

映画でなくTVドラマでも良いから実現してください。

もしかしたら続編で落とし前を付けることこそが、三木聡監督にとっての「あとしまつ」になるのかもしれません。

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